【道標 経営のヒント74】「差別化について考える」長谷川貴久


 今、ホテルの建設を計画している。約2年前に持ち上がった案件だが、やっと建設にこぎ着けそうだ。

 当初、2020年の東京オリンピック開催に伴い建設費がばかみたいに高騰する、という噂が先行し、建設費いかんによっては延期も視野に入れていたのだが、ふたを開けてみると、思った以上に上昇は落ち着いている感じだ。

 宿泊施設を新築でもリノベーションでもなにかしらアクションを起こす際必ずついて回るのは「差別化」という言葉である。

 新築ならまだ外観からアイキャッチのできるデザインを取り込むことができ、ルームミックスもマーケットに合わせて可能であるが、限られた空間での改装担当スタッフはほぼこの言葉に追いかけられる。2部屋を1部屋にして大きな部屋にしてみたり、デザイナーを入れてみたり、コンセプトルームを作ってみたりと試行錯誤の末、いざ終わってみると近隣の施設も同様のことを行っていて、ほぼ同じ感じになっていた、ということも聞く。

 宿泊プランにしても同様で、同じようなプランが恐ろしいほど出回っていて突出することなく埋もれてゆく経験も多々ある。

 「差別化」というものが「人を呼び込む手段」という解釈でよしとすると、やはり「人」に回帰するのだろう。高級、ハイエンドであろうと、宿泊特化であろうと、人が介在する時に、なにかしらの好印象は与えることができる。基本中の基本ではあるが、まずそこから手をつけたい。
 差別化というのは、訪れたお客さまの「好印象の記憶」の中にどれだけ入り込むことができるかだと私は思っている。立地や外観といったハード面の変更は差別化の入り口としては非常に分かりやすいのだが、意思決定までに時間がかかる。優先順位としては、まず、投資なしでできる人材育成だろうと思う。

 このコラムで何度も言ってきたことだと思うが、リピートの動機は実はスタッフに依存される。ハイエンドのホテルスタッフは「おそらくちゃんとしている」という推測はおおかた間違ってはいないと思うが、それ以外の施設のスタッフは「ちゃんとしていない」ということは絶対にない。

 むしろ施設のハード面にこれといった特徴がない場合でも、ハイエンドのホテルスタッフに引けを取らないサービスの提供が確立できれば、スタッフ個人個人の個性が加わる。これこそが一番の差別化となるのではないだろうか。

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